ひろげよう人権|東京人権啓発企業連絡会

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人権に関するさまざまな知識のコーナーです

私たちの選択が未来を変える
~エシカル消費でエいきょうをシっかりとカんがえル!~

プロフィール

一般社団法人エシカル協会代表理事
末吉 里花(すえよし りか)

一般社団法人エシカル協会代表理事
日本ユネスコ国内委員会広報大使
慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。
日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及をめざし講演を重ねている。
著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)ほか。
東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事

バングラデシュのフェアトレードの団体で母親が働く子供たち(学校帰り)と一緒に

エシカルとは

皆さんは「エシカル」という言葉を聞いたことがありますか?
「エシカル」とは、直訳すると「倫理的な」という意味で、法律の縛りはないけれども多くの人が正しいと思うこと、または社会的規範を意味します。最近、日本でも「エシカル消費」が注目され始めていますが、ここで言う「エシカル」とは、人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動のことを言います。
今、皆さんが着ている洋服は、どこで、誰によって、どのように作られたのでしょう?
今朝飲んだコーヒーは? その生産工程を想像してみたことはありますか?
想像したことがある皆さんは、製品を手にとってみても、その裏側にある背景を知ることは難しい、と感じたのではないでしょうか。買い手である私たちと、製品が作られる背景の間には大きな壁が立ちはだかり、この壁を乗り越えて生産工程を見ることは容易ではありません。
では、壁の向こう側で、人や地球環境を犠牲にするような問題が起きていたら、どう思いますか? もしかしたら、その背後には劣悪な環境で長時間働く労働者や、教育を受けられず強制的に働かされている子どもたち、美しい自然やそこに住む動植物が犠牲になっているかもしれません。さらに、生産という行為は、資源の過剰な消費、エネルギーの浪費、土壌をはじめとする自然環境の破壊、製品を作るときに使う有害な化学物質やC02の排出などによって、気候変動という問題を引き起こす一因にもなっているのです。
「エシカル」な消費とはそういったことがないような製品を購入することであって、いわば「顔の見える消費」とも言えます。今、世界の緊急課題である、貧困・人権・気候変動の3つの課題を同時に解決していくために、「エシカル」という概念が有効だと言われています。
日本においては、消費者庁が2015年5月から2年かけて「『倫理的消費』調査研究会」を開催し、エシカル消費の枠組みづくりが行われました。エシカル消費は間口が広く、「エシカル」という大きな傘の下に「フェアトレード」*1 を筆頭に「オーガニック」や「地産地消」「障がい者支援につながる商品」「応援消費」「伝統工芸」「動物福祉」*2 「寄付付き商品」「リサイクル・アップサイクル」*3 「エシカル金融」*4 など幅広い消費の形があります。

*1:フェアトレード:開発途上国の原料や製品を、適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立をめざす「貿易の仕組み」
*2:動物福祉:動物の幸せ・人道的扱いを科学的に実現するものであり、動物本来の生態・欲求・行動を尊重すること
*3:リサイクル・アップサイクル:元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すこと
*4:エシカル金融:投融資先が地球環境や地域、社会に犠牲を生んでいないかどうかなどを配慮している金融のあり方

途上国の生産現場の現状

バングラデシュにあるフェアトレードの生産者団体で働く人

ネパールにあるフェアトレードの団体で働く女性

そもそも、なぜエシカル消費が必要なのでしょうか。それはエシカル消費を推進していかなくてはいけない不公正な世界の現状があるからです。
私たちは日々何らかの消費をして生活をしていますが、毎日着る洋服の原料となるコットン、そしてコーヒー、紅茶、チョコレートの原料となるカカオなど、多くのものは途上国で作られています。
その生産背景には、労働搾取や児童労働、環境破壊といった深刻な問題が潜んでいます。
2013年4月に起きたバングラデシュの縫製工場ラナプラザの崩壊事故では、1,100人以上の労働者が犠牲になりました。ここでは主に、私たち先進国の消費者が安いといって好んで購入するファストファッションのブランド商品が作られていたのです。
私たち消費者が積極的に求める安い商品の裏には、弱い立場にある途上国の労働者の犠牲があるといっても過言ではありません。

私たちの選択が未来を変える
~エシカル消費でエいきょうをシっかりとカんがえル!~

ネパールにあるフェアトレードの団体で働く女性たち  写真提供:一般社団法人エシカル協会

一方、先進国に住む私たちができることは何でしょうか。
私たち全員に共通することは、消費者であるということ。毎日なんらかの消費のために大切なお金を使っています。企業にとって消費者の存在は無視できず、私たち消費者が何を求めるかによって、企業の生産のあり方が左右されるはずです。
そう考えたとき、私たち消費者が持つ力は絶大であり、同時に責任があります。それぞれが「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら買い物をすることが重要です。
フェアトレード、オーガニックコットン、環境に配慮した漁業による水産物や適切な森林管理により生産された木材などに対する認証制度は、私たちの代わりに製品の背景に問題が潜んでいないかを確認し、保証しようとする仕組みです。認証を受けた生産物には認証ラベルが貼られていますので、これを目印に購入すれば分かりやすいでしょう。また、企業やスーパーに、「フェアトレード商品は置かないのか?」「この製品の生産過程を知りたい」と掛け合ってみるのも効果があります。
エシカルという考え方は、自然と人と生き物たちが、良いあんばいで共存できる世界をめざしています。昔から日本人が大切にしてきた「おもいやり」や「おたがいさま」、「足るを知る」といった精神はエシカルの理念に通底し、高い親和性があります。
エシカルとは「エいきょうを シっかりと カんがえル!」ということです。
あまり難しく捉えず、身近なところから、自分に何ができるかを考え、実践してみてください。
5枚買っていたシャツのうち1枚をオーガニックコットンにしてみたり、いつもの1杯をフェアトレードのコーヒーにしてみる。すでに手にしている製品を修理しながら大切に長く使い続ける。製品の未来、つまり廃棄までを考えて消費をすることも、エシカル消費にとって大事な考え方です。
今日から、明日から、誰にでもできる最も身近な社会貢献がエシカル消費です。共に変化の担い手になりましょう!

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